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"バーンアウト"の語源を辿る

"バーンアウト"という概念の起源を調べます。

はじめに

"バーンアウト"という概念をよく目にします。

ただ近年ではバーンアウトという言葉の意味するところは非常に広義に渡っており、その言葉を使う人によっては病的な症状を意味していたり、一方では"最近やる気が出ない"という類のカジュアルな意味でも使われていたりします。

広義な使われ方の是非については今回は置いておいて、その語源、バーンアウトという概念の当初の意味が気になりました。

そこで今回は、"バーンアウト"という概念が提唱された起源を調べてまとめます。

"バーンアウト"の起源

バーンアウトという概念は、1974年に心理学者のフロイデンバーガーによってはじめて学術的に言及されました。

Herbert Freudenberger | 画像はこちらより引用

まずは日本語の文献から辿ってみます。

バーンアウト (燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス, 久保 真人, 2007によると、

バーンアウトという概念を, 初めて学術論文で とりあげたのはフロイデンバーガー(Freudenberger, 1974) である。 彼は, 保健施設に勤務していた間, 数多くの同僚が精神的, 身体的異常を訴えるのを 目撃した。 同僚たちは, 1 年余りの間に, 徐々に, あたかもエネルギーが失われていくかのように, 仕事に対する意欲や関心を失っていったのである。 Freudenberger は, 同僚が陥った状態を表現す るのに 「ドラッグ常用者 (がおちいる無感動, 無 気力) の状態」 を意味する俗語であったバーンア ウトという言葉を用いた。

この文献が言うには、バーンアウトは直訳の"燃え尽き"ではなく、"ドラッグ常用者 (がおちいる無感動, 無気力) の状態を意味する俗語"がその当初の語源とのこと。

日本語でバーンアウトの定義を検索してみると、同様の言及をしているサイトも少なくありません。

では、そのバーンアウトを提唱したとされるフロイデンバーガーの原著論文を読んでみましょう。

Staff Burn-Out, Herbert J. Freudenberger, 1974 を読む

Staff Burn-Out, Herbert J. Freudenberger, 1974

フロイデンバーガーの論文では、バーンアウトという単語を下記のように言及しています。

WHAT IS BURN-OUT?
The dictionary defines the verb “burn-out” as “to fail, wear out, or become exhausted by making excessive demands onenergy, strength, or resources.” And that is exactly what happens when a staff member in an alternative institution burns out for whatever reasons and becomes inoperative to all intents and purposes.

「バーンアウトとは何か? 辞書では"バーンアウト(burn-out)"という動詞を"エネルギー、体力、または資源に過剰な負担をかけることで機能しなくなる、摩耗する、または疲弊すること"と定義しています。そしてこれは、代替型の組織においてスタッフが何らかの理由でバーンアウトし、事実上、活動不能になる時にまさに起こることです。」

ということで、フロイデンバーガーの論文では辞書通りの意味、エネルギーが枯渇する/燃え尽きるという意味での"バーンアウト"という言葉を使っています。

この論文に一通り目を通してみましたが、先述の"ドラッグ常用者の状態を意味する俗語"という言及は見当たりませんでした。

まとめ

  • バーンアウトという概念を学術的に最初に言及したのは、1974年のフロイデンバーガー
  • 1974年フロイデンバーガーの論文では、バーンアウトという言葉を辞書通りの"エネルギーが枯渇する"という意味で言及している
  • 一方で、バーンアウトという単語は"ドラッグ常用者がおちいる無感動, 無気力の状態を意味する俗語"がその当初の語源であるとする説もある

バーンアウトが"ドラッグ常用者の状態を意味する俗語"を由来にもつという説の根拠となる論文は、今回は見つけることができませんでした。 バーンアウトという言葉の意味が語り手によって異なるのは、今も昔も変わらないのだという印象が拭えません。

以上、バーンアウトの起源を辿ってまとめました。

どなたかの参考になれば幸いです。

参考